アートの豆知識 エジプトに魅せられたナポレオン

エジプトに魅せられたナポレオン ルーブル美術館とナポレオン美術館

【ナポレオンと古代エジプトの神秘】

ナポレオンはエジプトでこそ真の栄光が得られると考えました。ルーブル美術館の1階には神々を祀ったエジプトの神殿が展示されています。

柱に刻まれているのは1007文字のピエログリフ(神聖文字)は神々に祈りお届ける力があると信じられていました。

ピエログリフを刻ませたのは、絶大な力を誇っていた国王ファラオ。紀元前14世紀エジプトの黄金期を収めたファラオ、あのツタンカーメンの祖父です。

ファラオは肉体が滅んだ後も自らの栄光が永久に続くことを望みました。

エジプトで見た永遠なるのも、それはナポレオンにとって逃れられない魔力となっていきました。

西洋にとって神秘そのものだった古代エジプト。中でも美しい装飾をまとったミイラは驚くべき術でした。エジプトの民し後魂が肉体に戻り永遠に生きられるようにミイラを作りました。一部の隙もなく布で巻かれた顔。し者の魂を悪霊から守るためのものです。棺も大変美しく飾られています。顔はし者の理想の姿で描かれており、空白を恐れるように隅々までし者を守る精霊や神々が描かれています。胸元には復活の象徴の昆虫スカラベが、そして闇から太陽を生む女神が刻まれている。足元には神に届ける言葉がピエログリフで記されています。神よ、し者のために翼を広げて闇を追い払ってください。そしてし者が永遠に朽ちることのない星になれますように。

【皇帝ナポレオンとナポレオン美術館】

エジプトで永遠の命に触れたナポレオン。4年後共和国美術館に新たにナポレオン美術館と名付けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皇帝ナポレオンと皇后ジョセフィーヌの戴冠式』

ルーブルの2階にある赤の間にはナポレオンが描かせた1枚の大作があります。1804年。ナポレオンは皇帝に即位。高さ6メートル幅9メートルの巨大な絵画。皇帝ナポレオンと皇后ジョセフィーヌの戴冠式(1806−1807年ジャック=ルイ・ダヴィット)です。ダヴィッドは古代ローマの英雄など歴史画で知られていました。パリのノートルダム大聖堂で2万人が参列した荘厳な場面。画面の中央にで皇后に冠を授けるのがナポレオンその人です。望んだのは自らが歴史の一部になることでした。白い毛皮に覆われたマントはルイ14世にならったもの。腰にはフランスおおけ伝来の宝石で飾り立てた剣。そして頭に古代ローマの皇帝のように月桂冠をかぶっています。跪く皇后ジョセフィーヌ。深紅のマント。そのやわらかな風合い。。。ナポレオンの背後に付き従うように描かれているのがローマ教皇ピウス7世。ナポレオンは自らを強行をしのぐ存在であると人々に認めさせようとしたのです。この絵が公開されると若き皇帝に心酔する民衆がルーブルに押し寄せたと言います。ナポレオンは自らの名前を冠した美術館を世界一の規模にしようとします。それまであまりなかった時代の作品を中心に5千点あまりを集めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エイローの戦場におけるナポレオン』

権力の絶頂期に書かれた1枚の絵があります。『エイローの戦場におけるナポレオン』(1808年アントワーヌ=ジャン・グロ)ロシアプロイセン連合軍に激戦の末勝利した時の姿です。わずか1に日で使用者5千人を出した壮絶な戦いでした。栄光の影の戦争の現実。勝利した皇帝の顔は青白く疲れ切ったかのよう。この5年後、戦争の天才だったナポレオンは冬のロシア遠征で24万の兵を失い惨敗。国民の心も離れ、1814年、退位を余儀なくされます。フランス革命から25年、ナポレオンの時代が終わりました。

戦争で勝利することで皇帝となった男は、戦争で敗れることで全てを失ったのです。

ナポレオンが権力の座を追われた後、フランスでは再び国王が即位。ルーブルは王立美術館となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グランドオダリスク』

そして現れたのはナポレオンの時代にはなかった芸術です。フランス人画家ドミニク・アングリル『グランドオダリスク』 オダリスクとはオスマン帝国のハーレムに使えた女性です。青い布に包まれた透き通るような肌。そして長く伸びた背中。作者アングルはナポレオンの戴冠式を描いたダヴィッドの元で歴史画を学びました。しかしアングルは自らの感性が赴くまま女性の裸体を描き続けます。1人の英雄が去った後新しい芸術が生まれようとしていたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【最後に】

ナポレオンが晩年に残した言葉です。「私はどこから来たのか。私は何であるのか。その答えは私の思念を超えている。私は己を知らない肉体に過ぎない」我々とは何か人間とは何か。4千年の時を超え、ルーブルの至宝は語りかけます。

 

 

 

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